現場写真集 PHOTOS

東京東部低平地現場視察記録

武蔵野台地と下総台地に挟まれた東京東部低平地では、1910年頃から1975年頃までに、荒川の周辺を中心に最大約4.5mもの地盤沈下が発生し、地表標高が満潮時の平均海水面よりも低い“ゼロメートル地帯”が生まれました。この地盤沈下の痕跡と、対策の成果を現地視察しました。

 

イタリア文化会館出発(解説者:土屋信行、通訳:CAO Vu Quynh Anh)

東京東部低平地現場視察一行は、バスでイタリア文化会館前から出発しました。

 

(1) 平井駅北口洪水表示板

JR平井駅北口広場には、過去の洪水でどの高さまで浸水したかが判る表示板があります。
ここの地盤高は、大潮の干潮位よりも低く、一旦洪水になれば、ポンプで排水しないかぎり、海面下に没してしまうことがわかります。

 

(2) 嵩上げを繰り返した旧中川旧護岸

荒川放水路(現荒川)と隅田川に挟まれた東京低地の一部は、水門でこれらの河川と区切り、水位を周辺の地盤高より低いA.P.-1.0mの抑え、不要になった背の高い堤防を撤去し、水辺を市民に開放しました。下の写真は、記念のために保存してある昔の堤防です。それ以前には、地盤沈下に併せて何回も堤防の嵩上げが行われてきました。

 

(3) 平井7丁目地盤沈下と高台化

写真右側は平井7丁目付近の荒川堤防の天端で、その奥の一段低いところが荒川開削時に作られた堤防天端です。地盤面はさらに低くなっており、大潮の干潮時以外、ここは荒川の水面より低くなっています。

平井7丁目では、この地盤面を堤防天端高さまで嵩上げして新たなまちづくりを行いました。高台の上には、水害から守られた安全な市街地が広がっています。

市街地側からは、階段とスロープで結ばれています。

 

(4) 江戸川区役所地盤沈下痕跡

江戸川区役所前には、荒川の水位をリアルタイムで表示する表示搭が設置されている。この時は区役所の地盤面から1.2m高くなっていた。

区役所の側面に移動すると、歩道から写真正面の扉まで、約2mほどの高低差があり、階段が設けられている。建設当時は、この扉は地上から直接出入できる高さだったそうです。区役所の建物は地中深くの強固な地盤に届く杭基礎で支えられていたため沈下せず、歩道部は2m近く沈下したため、このような事態となってしまったのです。ちなみに、画面左側のパイプ類は、建設当初は地中に埋設されていたものです。

 

(5) 新川親水整備

新川は、河道が両端共に、新川排水機場と新川東水門で締め切られており、水位は新川排水機場により常時 A.P.+0.5m に維持されている。水位の安定に伴い高い堤防が不要な条件を活かし、親水空間の整備が進められました。

「新川西水門広場」が、新川千本桜の起点として整備され、敷地には広場のほか手洗所や新川千本桜のモニュメントとなる高さ15.5メートルの火の見やぐらがあります。

 

(6) 葛西旧海岸堤防

地下鉄東西線西葛西駅の近くには、旧海岸堤防の一部がモニュメントとして残されています。

このモニュメント以南は地盤沈下で水没したエリアで、葛西沖開発土地区画整理事業によって元の陸地を取り戻し、この場所の海岸堤防はその役割を終え一部がモニュメントとして残されました。

 

(7) 葛西臨海公園隠し海岸堤防

葛西沖開発土地区画整理事業区域の内、湾岸道路以南のエリアは、葛西臨海公園として整備されました。
この公園には、海岸堤防が整備されています。一見すると何処にも堤防らしきものは見当たりませんが、公園の景観に配慮し、堤防は、盛り土で隠され、公園の緑と一体になっています。下の写真は公園の中心を構成する園路ですが、東京湾に向かって上り坂になっています。堤防はこの坂の下に隠れています。