論文集 事前防災“持続力と回復力” Collection of papers:Sustainability and Resilience

水害常襲地域における建築的減災対策に見る地域特性に関する研究 -利根川・荒川・大井川及び信濃川・揖斐川・淀川を対象として- 水害常襲地域における建築的減災対策に見る地域特性に関する研究 -利根川・荒川・大井川及び信濃川・揖斐川・淀川を対象として-

著者: 横田 憲寛・青木 秀史・畔柳 昭雄 / 所属: 日本大学
出典:日本建築学会計画系論文集 第81巻 第727号,1929-1937,2016年9月 J.Archit.Plann.,AIJ,Vol.81 No.727,1929-1937,Sep.,2016 DOI http://doi.org/10.3130/aija.81.1929

 

全国には洪水や浸水などの水害を常に被る水害常襲地域が存在する。また、近年は想定がとされる河川においても水害被害が多発している。水害常襲地域では従来まで、水屋・水塚と呼称される水防建築が自助的取り組みとして存在してきた。しかしながら、公助としての治水整備の進展により、従前までの自助的な取り組みは消滅しかけており、住民意識からは相互扶助や規範意識が希薄化してきている。こうした災害文化の消滅傾向に対して、これまで取り組まれてきた建築的減災対策を集落・地区から屋敷及び家屋に着目し、そこに見られる地域特性について、共通性と特異性、類似性と固有性について捉えることとした。結果、①集落・地区では、自然堤防や微小高地に屋敷を形成し、囲堤により集落全体を囲むなど、多重の対策で水災害を回避していた。一方、扇状地では土の性質(砂利)を反映することで氾濫水はほとんど地中に浸透するため、越流方向に堤防を設けるだけで集落全体を囲む治水対策は行われず、散居型の集落形成を見せる。②各住宅では、水屋・水塚、屋敷林、構堀が「備え」として存在し、その配置においては共通性としての「方向性」への配慮が見られた。③屋敷の盛土、母屋の盛土、蔵の基壇としての水塚の盛土において地域特性が見られた。また、過去の水害経験を反映して各盛土に高さの違いが見られた。建築的減災策は消滅しつつあるが、今後、水害に強い社会を築いていくためには、地域社会全体を「守る」こと及び各住戸による「備え」まで多重の設えによる減災対策を取る方法を検討する必要があることを見出した。

全国には洪水や浸水などの水害を常に被る水害常襲地域が存在する。また、近年は想定がとされる河川においても水害被害が多発している。水害常襲地域では従来まで、水屋・水塚と呼称される水防建築が自助的取り組みとして存在してきた。しかしながら、公助としての治水整備の進展により、従前までの自助的な取り組みは消滅しかけており、住民意識からは相互扶助や規範意識が希薄化してきている。こうした災害文化の消滅傾向に対して、これまで取り組まれてきた建築的減災対策を集落・地区から屋敷及び家屋に着目し、そこに見られる地域特性について、共通性と特異性、類似性と固有性について捉えることとした。結果、①集落・地区では、自然堤防や微小高地に屋敷を形成し、囲堤により集落全体を囲むなど、多重の対策で水災害を回避していた。一方、扇状地では土の性質(砂利)を反映することで氾濫水はほとんど地中に浸透するため、越流方向に堤防を設けるだけで集落全体を囲む治水対策は行われず、散居型の集落形成を見せる。②各住宅では、水屋・水塚、屋敷林、構堀が「備え」として存在し、その配置においては共通性としての「方向性」への配慮が見られた。③屋敷の盛土、母屋の盛土、蔵の基壇としての水塚の盛土において地域特性が見られた。また、過去の水害経験を反映して各盛土に高さの違いが見られた。建築的減災策は消滅しつつあるが、今後、水害に強い社会を築いていくためには、地域社会全体を「守る」こと及び各住戸による「備え」まで多重の設えによる減災対策を取る方法を検討する必要があることを見出した。

 

 

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